PROJECT
STORY

05

日光市の観光MaaS

日本を代表する観光地日光の課題を解決しマーケティングソリューションでMaaSを加速させる

OUTLINE

MaaSとはMobility as a Serviceの頭文字で、個人の旅行やお出かけに合わせて、公共交通をはじめとした複数の移動サービスを最適に組み合わせ、検索や予約、決済をワンストップで行うサービスです。

東武鉄道が提供する「NIKKO MaaS(日光マース)」は、東武線の各駅から日光までのフリーパスや特急券をはじめ、日光地域でのバスや、EV(※1)・ PHV(※2)カーシェアリング、シェアサイクル、観光コンテンツなどをスマートフォンでスムーズに検索・購入・利用できるシステムで、複数の企業や自治体の協力で実現しました。

従来の観光フリーパスと異なり、環境に配慮しているところが特徴です。NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、NIKKO MaaSをより多くのお客さまに使ってもらうために、サービスの周知拡大や日光エリアにおける観光促進プロモーションの提案を実施。NTT Comとドコモのアセットを組み合わせて、NIKKO MaaSチケットの販売拡大に貢献しました。

※1 EV(Electric Vehicle)…電気自動車。
※2 PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)…外部電源で充電できるハイブリッド車で、ガソリンエンジンと電気モーターを併用して走行する。

PROJECT MEMBER

私たちが紹介します

  • NTTコミュニケーションズ
    第四ビジネスソリューション部

    Shotaro Fujiki

    藤木 翔太郎

  • NTTコミュニケーションズ
    ソリューションサービス部 ICTイノベーション部門

    Hisashi Murayama

    村山 尚

  • NTTコミュニケーションズ
    ソリューションサービス部 ICTイノベーション部門

    Tomohiro Koseki

    小関 智洋

  • NTTコミュニケーションズ
    ソリューションサービス部 デジタルソリューション部門

    Kyoko Nakahashi

    中橋 京子

01 プロジェクトのミッション

日光エリアが抱える観光課題を解決するMaaSそのマーケティング支援を担う

日光東照宮やいろは坂の紅葉などで有名な日光エリアは国立公園であり、いろは坂を上った先にある奥日光は脱炭素先行地域にも指定されています。一方、年間1,000万人にも及ぶ観光客の約7割はマイカーを利用し、温室効果ガスの排出による環境負荷は、社会課題の一つになっていました。また、いろは坂は生活道路でもあり、住民生活にも負担がかかるといったオーバーツーリズム問題も指摘されています。NIKKO MaaSは、そんな日光エリア特有の課題解決のため、各地で使われてきた観光フリーパスとは一味異なる環境に配慮したサービスとして誕生しました。電車やバス、EV・PHVなどを組み合わせることで、マイカー利用を少なくして温室効果ガスの排出を抑え、生活道路の渋滞を解消することを目指しています。言うまでもなく、この一大プロジェクトには企業などの壁を超えた連携が不可欠であると同時に、いくら優れたビジョンであってもビジネスとして成立させなければサービスは継続できません。運営に参画している各事業者のサービスを観光客に利用してもらうことで収益を上げていく必要があります。その中で企業や地域社会のDX支援を強みとするNTT Comは、利用者拡大のためのマーケティング支援、日光エリアの観光促進の提案といった形で東武鉄道に協力しております。

02 ドコモグループの強みを活かした取り組み

ドコモのスマホから得られた緻密なデータをNTT Comのデータサイエンティストが分析

NTT Comが取り組んだのは、リリース後、順調に伸びてきたNIKKO MaaSの利用者数をさらに増加させる施策です。利用者拡大のために、日光エリアを訪れている観光客の属性や交通経路などを詳細に分析して可視化。特に電車の利用が見込まれる層に対して広告配信を行い、NIKKO MaaSに誘客する取り組みを実施しました。
その際、ドコモグループとして、NTT Comのみならずドコモのアセットも最大限に利用しました。分析・可視化においては、主にドコモの「モバイル空間統計」のデータをNTT Comのデータサイエンティストが分析。このモバイル空間統計は、携帯電話ネットワークの仕組みを使った人口統計データで、特定の地域を訪れたユーザの性別、年代、居住地の市区町村、趣味嗜好や、車、鉄道など移動手段といった属性情報が分かります。ドコモグループとして手掛けるマーケティングの強みといえるこれらの精緻な情報から、日光への観光客の特徴を把握し、そこに加えて、東武鉄道から提供されたフリーパス購入データとの比較分析も考慮してペルソナを作成し、ターゲットに興味を持ってもらえるコンテンツの制作支援や広告配信ターゲットの選定を実施しました。その後、ドコモが持つ「docomo Ad Network」を利用して、ドコモが運営するメール・マイマガジン・dメニューに、属性に合わせたコンテンツを配信し、来訪見込み客に絞ったターゲットプロモーションを推進しました。

03 プロジェクトの成果・価値

マーケティング施策によるコンテンツ制作と広告配信で前年度比600%の売上げを達成

渋滞などの問題を解消していくため、今回は、戦略的に鬼怒川や湯西川などの西側エリアや奥日光といった北側エリアにスポットを当てて魅力を伝えることで、観光客を日光エリア全体に分散させるマーケティング施策を実施しました。なかでも、湯西川エリアでは、数百の小さなかまくらのなかでロウソクの灯が点される「かまくら祭り」の写真を素材にコンテンツ作成を提案。開封率をモニタリングしたところクリック率が想定よりも高く、写真付きプロモーションの割合やターゲット層への広告配信を増やすと、最終的なPV数は当初想定5倍以上に。湯西川エリアを訪れるプランに該当するNIKKO MaaSチケットの売上げも前年度比600%という非常に大きな伸びを達成しました。湯西川エリアは日光のなかでも都内から距離が遠い場所であり、事業者の収益にあたる運賃収入のインパクトにも貢献できたと思っています。この結果は、東武鉄道にも驚きを持って受け入れていただけました。ドコモやNTT Comは、モバイルやネットワークといったITインフラを支えるという部分がクローズアップされがちです。しかし、dポイントクラブ会員約9,600万人のデータ基盤やスマホの位置情報などを駆使したマーケティング施策で、お客さまの事業成長に貢献できると示せたのも大きな成果の一つでした。

04 これからの展望

日光エリアでの成功体験を各地に横展開することで観光課題を解決していきたい

NTT Comがドコモグループとなり、法人営業においてもITや通信に留まらず、マーケティング領域でもお客さまに提案できる武器が増えました。ITと通信、マーケティングを組み合わせながら、お客さまの課題を捉え、将来のなりたい姿や課題解決に向けて伴走する。これがドコモグループにおける法人営業のやり甲斐ですし、今回のプロジェクトではそれを強く実感することができました。
もちろん、NIKKO MaaSは、これからも続いていきます。データドリブンによる売上げ増といった成功をテコに、今後はNIKKO MaaSの認知度調査や広告の効果測定、離脱ポイントなどをデータから検証し、さらなる利用者数アップを目指していきます。また、観光面における新たな日光周遊の施策などの打ち出しも模索しているところで、NTT東日本など地域との関わりが深いグループ企業との連携とともに、自治体も巻き込みながら新しい価値を提供していきたと考えています。また、日光エリアでの成功体験をほかの観光地にも横展開することで、さまざまな観光地が抱えるオーバーツーリズムという社会課題に貢献することを目指していきます。
今回は観光という切り口でしたが、エンドユーザーにサービスや商品を提供して収益を上げている多くの企業にとって、ドコモグループのマーケティングは有効な武器になるはずです。現在、ドコモの法人営業における中核はITソリューションと音声ソリューションですが、ゆくゆくはマーケティングソリューションも収益の柱として育てていきたいと意気込んでいます。

※掲載内容は2023年12月時点のものになります

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